暗号解読〈下〉サイモン・シン

  • 2017.10.29
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【感想】
上巻に引き続き、第二次世界大戦後の暗号作成と解読(主に作成側の発展が大きい)ならびに今後の展開に関して記載されている。
上巻同様、ボリュームがあり、かつ難解な数式を使用せずとも理解できる内容で例えも交えながら暗号方法が記載されておりとても満足できる内容。


【要約】
ナヴァホ暗号
* エニグマなどの電気機械式暗号はかなりの安全性を保証してくれるものの、ものすごい時間がかかる点で戦争中には有効ではなかった→ナヴァホ暗号をアメリカ軍は代わりに用いた
* 送信者は一連の通信文を受け取り、それを英語からナヴァホ語へ翻訳して送信する。受信者は、記憶してある用語集とアルファベットを使いながら通信文を英語に戻す
* ナヴァホ暗号の成功は、ある者にとっては母語であるものが、それを知らない者にとってはまったく意味をなさないという単純な事実による→日本軍はナヴァホ暗号を攻略することができず戦争の情報戦に破れた

【戦後の暗号発展と今後】
①DES(Data Encryption Standard)暗号
・戦後、コンピューターの誕生により、暗号をかける対象はアルファベットではなく二進数の01に対してと変化。
・暗号自体は転置式or換字式のまま

②公開鍵暗号の誕生=鍵配送問題の解決
・今までの暗号は全て対称暗号(暗号化鍵と複合鍵が同じ)であったため、暗号鍵が敵の手に渡らないように細心の注意を払う必要があった=鍵配送の問題
・しかし、非対称鍵暗号(一方向関数による鍵)の導入により鍵配送の問題が解決されることに

現在使用されている一方向関数は素数の積:素数の積の数を素因数分解することは現代の数学では容易ではないため、個別鍵の特定はほぼ不可能。世界中のコンピューターを使用して演算したとしても数千年以上かかる
→事実上、解読不可能な暗号システムに。ただし、現在のコンピュータの処理能力をはるかに超える量子コンピューターの誕生により解読される可能性が残されている

③量子コンピューター
・量子的な重ね合わせの状態を用いることにより、現在のコンピューターが1つずつ処理しているタスクをまとめて一気に処理できるように
→まだ実現化されていないがもし実現されれば、公開鍵暗号に用いられている素数の積の素因数分解を瞬時に行えるようになる=暗号解読が一瞬で可能になる。

④量子暗号
・今までの暗号作成は暗号の複雑さの方が上だという事実だけを論拠にしていたが、量子暗号の場合は、原理的に解読不可能な暗号
・伝送する情報の量と同じ長さの秘密鍵を送信者と受信者が共有することで初めて可能になる。この秘密鍵の共有を量子状態の特性によって実現し盗聴されても暗号は破られないどころか、盗聴を検出可能になる

過去二千年のあいだには、単アルファベット暗号こそは、多アルファベット暗号こそは、そしてエニグマのような機械式暗号こそは、解読不能だと言われてきた。しかしいずれの場合も、結局はその主張の間違いが証明されたのだった。そんなことになったのも、その時点における暗号解読者の独創性とテクノロジーよりも、暗号の複雑さの方が上だという事実だけを論拠にしていたからである。今日の目で振り返れば、かつて解読不能といわれた暗号はどれもみな、いずれ解読法が見つかるか、解読のためのテクノロジーが開発されるのは避けられなかったことがわかるのである。  だが、量子暗号だけは別だ。物理学の歴史の中でもっとも成功を収めた理論である量子論によれば、アリスとボブが取り決めたワンタイム・パッドの鍵をイヴが正しく傍受することは、原理的に不可能なのである

現在は、RSAシステムによる公開鍵暗号方式により暗号作成の方が暗号解読より優位に立っている状況

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