「AI vs 教科書が読めない子どもたち」感想ver1

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友達から勧められて、新井紀子さん著書の「AI vs 教科書読めない子供たち」を先日読みました。東ロボくんで有名な新井さんですね。ヘルスケア分野でもビッグデータ、機械学習、AI診断といったバズワードが氾濫してきているので、実態を知るのにちょうど良い機会だと思いました。

タイトルの「教科書読めない子供たち」という表現は、読者の興味や、まさかそんなことはないだろうという疑念を掻き立てるのには十分な表現で、さすがですね。


結構ボリュームがあり、内容も濃かったので、
①著書の今後の未来予想図
②機械学習周りの統計・確率部分
の大きく2つに分けて、2回にわたり紹介しようと思います(ネタバレ含む)


今回は、①についてです。
これに関しては、「はじめに-私の未来予想図」に記載された2ページの部分が、完璧な本の要約になっていて素晴らしい内容だったので、そこを読むだけでも価値があると思います。
はじめにの部分で、本全体の要約を試みているようで、実際には全然要約になっていない、というケースがかなりあるのに対して、この本はしっかり完璧な要約になっています。やはり、新井さんが数学者で論理的に物事を考えいう習慣が身についているからなのでしょうか。

新井さんの主張はこうです(一部改変)

AIはコンピューターであり、コンピューターは計算機であり、計算機は計算しかできない。つまり、人間の知的活動の全てが数式で表現できなければ、AI が人間にとって代わることはできない。
そして、今の数学にはその能力はない(コンピューターの速さやアルゴリズムの改善の問題ではなく、数学の限界に依存する)

よって、シンギュラリティは来ないし、AIが人智を超えて人類を滅ぼすことはない(三段論法)

それでは人間にとって未来は安心かと、そういうわけではない。
人間の読解力が非常に弱く、物事の意味を理解する力が低いので、読解力の乏しい人間が労働力として提供している仕事のほとんどはAIに代替されてしまう(実際に、東ロボくんはMARCHレベルの大学には合格できる偏差値に達した)

結果として、AIに多くの仕事が代替された社会では、労働市場は深刻な人手不足に陥っているのに、巷には失業者は最低賃金の仕事を掛け持ちする人々が溢れ、経済はAI恐慌の嵐に晒される


この言葉を最初に読んだとき、「人間の読解力ってそんなに低いのかな?」と疑問に思いました。しかし、第3章で、新井さんが全国の中高生を対象とした詳細な読解力調査の結果を、具体例を交えて共有していた部分を読んだ後は、「これは、AIがすごいというよりかは、人間の読解力が低いのが原因なのか」と驚きとともに納得。

読解力と言っても、抽象的な表現ですので、新井さんはさらに構成要素にまで因数分解して、しかも各々の要素を判定するテスト問題も自力で開発していました!(情熱がすごい)

読解力の構成要素6つ
1)係り受け:主語と述語の関係や修飾語と被修飾語の関係を理解する力
2)照応:指示代名詞が何を指すかを理解する力
3)同義文判定:二つの違った文章を読み比べて意味が同じであるかどうかを判定する力
4)イメージ同定:文章と図やグラフを比べて、内容が一致しているかどうかを認識する能力
5)具体例同定:定義を読んでそれと合致する具体例を認識する力
6)推論:文の構造を理解した上で、文章の意味を理解する力

それぞれ、どのような問題になるのかは、これだけだとイメージがつかないが、例えば、「推論」の問題だと、下記のような問題です。

「推論」の問題
エベレストは世界で最も高い山である

上の文に書かれたことが正しい時、 以下の文で書かれたことは正しいか。

エルブルス山はエベレストより低い
①正しい ②間違っている ③判断できない

ちなみに正解は①。あまり、中高ではやらないような問題で、どちらかというと、企業のwebテストの国語で出てくるような感じ。

ちなみにAIは、上記6つのうち、特に「同義文判定」「イメージ同定」「具体例同定」「推論」の力が低いが、実際の中高生もAIと同等程度に低かった。つまり、 基礎読解力がないので、教科書がそもそも理解できていない可能性が高いとのことです。

確かに教科書が読めないと、試験を乗り切るために付け焼き刃的に暗記をするしか方法がなくなり、試験勉強の時間をかけてその時の試験は乗り切ったとしても、中身は理解できていないので、試験が終わると、また0から勉強しないといけない状況に陥るのは容易に想像がつきます。



さらに、衝撃的な内容だったのが、
超有名私立一貫校の旧帝大進学率が高いのは、中高の教育方針のおかげではなく、東大に入れる基礎読解力が中学入学時点で身についているから?
というもの。高校2年生まで部活に明け暮れて、赤点ギリギリでも、超有名私立一貫校に入れる人は、教科書や問題集を「読めば分かる」ので、1年間受験勉強に勤しめば、旧帝大クラスに入学できてしまうとのこと。

偶数+奇数
中高時代、高校3年生の途中まで部活に明け暮れていた友人が、部活引退後に勉学モードに切り替えて有名大学に入学したケースは身の回りでも多くあったし、高校1年で図書館で大学の数学を独学で勉強して、数学の別解を大学レベルの線形代数や微分積分を使って説明している天才もいた。。。教科書が読めて理解できれば、最強なのかもしれない。


こうなると、そういったAIに代替されない読解力(特に、「イメージ同定」「具体例同定」「推論」の能力)はどうやって養えば良いのか?という疑問が出てくるのは当然ですよね。そこに関しては、まだ新井さんも解を見いだせていないみたいですが、推測はしていました。
1)多読よりは、精読、深読?
2)ドリルと暗記のみの教育を行うのはダメ(表層的理解しかできない(意味を理解しない)+暗記でいい点数をとった時に、間違った成功体験となってしまうのダブルパンチ)

など。やはり、たくさんの問題を解かせて、量をこなす(学校の宿題はそうなりがち)のではなく、1つ1つの問題に対して、「どうしてその解答に至るのか?」というロジックを理解できるまで、自問自答(質問力と、一見難しい解答を要素に分解する力)する訓練を積ませることが重要なのではと感じた。


親ができることとしては

1)子供の疑問にはしっかりロジックを持って答える
例えば、よくある「空はどうして青いのか?」というような質問に対して(めんどくさいなぁ)と思って、
「晴れているからだよ(全く答えになっていない)」とか「青いからだよ(トートロジー)」、「どうしてだろうねぇ(回答を濁す・逃げる)」といった、その場しのぎの対応をせずに、論理的に理由をわかりやすく伝える(子供にもわかるように伝えるというのは説明力を鍛えることにもなるので、自分のためにもなる。年齢を重ねていくと、疑問を調べたり考えたりするのが億劫になり時間も限られているので、疑問のまま自分と折り合いをつけがちになるけれども、その習慣もいけないのかもしれない。)

もしくは、すぐにわからなければ「一緒に調べてみようか!?」と言って、調べてみる。こういった姿勢が重要なのでは?


2)子供に量をこなすことばかりを求めない
よく学習塾に行かせると、毎回のノルマが決められていて、終わらないと帰れない(公文式など)というケースが多い。
自分も子供の頃、公文をやっていたのでよくわかるが、やらされている時、子供は早く終わらせようとして、意味を理解しないまま量だけをこなすことになりがち。結果として理解をしていないので、逆に合格点を取るまで時間がかかってしまう(夏の宿題も一緒)

→特に数学や物理などは、覚えることは少なく、宿題内容も考え方は同じで数字が違うだけというケースは多いので、宿題を終わらせる時間を考えても、最初に意味をしっかり理解させた方が絶対に効率が良いということを子供に体感させる必要があるかもしれない。具体的な方法は、パッとは思いつかないですが(苦笑

「Coursera」や「udacity」のような「MOOC(ムーク)」で、5,6歳くらいから自分で勝手に好奇心を持って勉強してくれる子どもになってくれれば理想ですが^^;;

詰め込み教育が、表層的な理解に止まっていた場合に、それでもテストで点を取れてしまう危険性がある(そのようなテストに現状なっている)のが怖い。暗記を磨いても、AIには叶わないし、AIに代替される部分で勝負しても勝ち目はないので。



やはり内容が濃くて、全然書き尽くせないですね。次回は、本で紹介されていた東ロボくんの仕組み(機械学習周りの統計・確率のアルゴリズム)について書きたいと思います。

AIに興味のある人だけではなく、子どもの教育に関心のある方にもオススメの内容だと思いますので、ぜひ読んでみてください。

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