ドラッカー名著集1「経営者の条件」(前半まとめ)

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【感想】
知的労働者が、個人として組織全体として成果をあげる為に必要な能力を章立てで解説している。洞察は鋭く、具体的でありながら非常に普遍的であるところが大変参考になる。前半は、成果をあげるための時間管理術・貢献へのコミットメント・人の強みを生かす人事について述べている。個人的には、「成果をあげるには、近頃の意味でのリーダーである必要はなく、性格、姿勢、価値観、強み、弱みのすべてが千差万別であったが、皆成果をあげる能力を習得していた」という主張が印象的だった。



【要約(前半:第1章ー5章】
第1章:成果を上げる能力を習得するには
成果をあげる人もまた、医者や高校の教師やバイオリニストと同じように千差万別である。彼らは成果をあげられない人と同じように千差万別である。しかも成果をあげる人は、タイプや個性や才能の面では、成果をあげない人とまったく区別がつかない。成果をあげる人に共通するものは、つまるところ成果をあげる能力だけである。成果をあげるために身につけておくべき習慣的な能力は5つ
(1)何に自分の時間がとられているかを知ること。
残されたわずかな時間を体系的に管理すること。
(2)外の世界に対する貢献に焦点を合わせること。
仕事ではなく成果に精力を向けること。「期待されている成果は何か」からスタートすること。
(3)強みを基盤にすること。
自らの強み、上司、同僚、部下の強みの上に築くこと。それぞれの状況下における強みを中心に据えなければならない。弱みを基盤にしてはならない。すなわちできないことからスタートしてはならない。 
(4)優れた仕事が際立った成果をあげる領域に力を集中すること。
優先順位を決めそれを守るよう自らを強制することである。最初に行うべきことを行うこと。二番手に回したことはまったく行ってはならない。さもなければ何事もなすことはできない。 
(5)成果をあげるよう意思決定を行うこと。
決定とは、つまるところ手順の問題である。そして、成果をあげる決定は、合意ではなく異なる見解に基づいて行わなければならない。


第2章:時間管理
組織が大きくなるほど、実際に使える時間は少なくなる。自らの時間がどのように使われているかを知り、自由にできるわずかな時間を管理することがそれだけ重要になる。時間の使い方は練習によって改善できる。だがたえず努力をしないかぎり、仕事に流される。

体系な時間の管理方法3つ
(1)する必要のまったくない仕事、何の成果も生まない時間の浪費である仕事を見つけ、捨てる
(2)他の人間でもやれることは何かを考える。
自らが行うべき仕事を委譲するのではなく、自らが行うべき仕事に取り組むために他の人にできることを任せることは、成果をあげるうえで必要である
(3)自らがコントロールし、自らが取り除くことのできる時間浪費の原因を排除する

時間管理の最終段階は、時間の記録と仕事の整理によってもたらされた自由な時間をまとめること。会議や打ち合わせを同じ日にまとめるとか、毎朝自宅で仕事をするなど。緊急かつ重要な仕事は締切を設定する必要がある


第3章:貢献へのコミットメント
成果を上げるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。努力に焦点を合わせると、目標を低く設定したり、間違った目標を設定したりすることにつながる。
なすべき貢献にはいくつかの種類があるが、3つの領域における成果を必要とする
(1)直接の成果
企業においては、売り上げや利益など経営上の業績。病院においては患者の治癒率。
(2)価値への取り組み
(3)人材の育成
今日、明日のマネジメントにあたるべき人間を準備しなければならない。人的資源を更新する必要がある

上司が部下に何かを言おうと努力するほど、かえって部下が聞き違える危険は大きくなる。部下は、上司が言うことではなく、自分が聞きたいことを聞き取る。なので、上司は部下に対して「あなたの知識や能力を最もよく活用できる道は何か」を聞くべきだ。こうして初めて、部下が「自分はどのような貢献を期待されるべきか」を考えるようになり、貢献へのコミットメントを中心としたコミュニケーションが可能になる。


第4章:人の強みを生かす
成果を上げるには、人の強みのみにフォーカスし、人の強みを生かさないといけない。人事において重要なことは、弱みを最小限に抑えることではなく強みを最大限に発揮させること。弱みに配慮した人事では、平凡な組織に終わってしまい、強くなれない。

組織といえども組織に属する個人個人が持つ弱みを克服することはできない。しかし組織は、人の弱みを人事配置によって意味のないものにすることができる。

仕事を客観的かつ非属人的に構築しなければならない。人に成果を上げさせるには「自分とうまくいっているか」を考えてはならない。「いかなる貢献ができるか」「何を非常によくできるか」を問わなければならない。一流のチームを作るものは直接の同僚や部下とは親しくないと言うことである。調和ではなく成果を求めるということである。

強みに焦点を合わせた人事の質問
(1)よくやった仕事は何か
(2)よくできそうな仕事は何か
(3)強みを発揮するには何を知り何を身につけなければならないか 
(4)彼の下で自分の子供を働かせたいと思うか。そうであるならなぜか。そうでないならなぜか

人事では 「手放せない。いなくては困る」という声に耳を貸してはならない。ある人が「欠くことができない」という理由は3つしかありえない。
(1)その者が実際には無能であり、かばってやる必要がある場合
(2)弱い上司を支えるために、その者の強みを使っている場合
(3)重要な問題を隠すため、あるいは取り組みを遅らせるために、その者の強みを使っている場合

成果を上げるには、部下は上司の強みを生かさなければならない。
現実は企業ドラマとは違う。部下が無能な上司を倒し、乗り越えて地位を得るなどと言うことは起こらない。上司も人であるから、人であれば強みとともに弱みを持つ。なので、上司の強みを強調し、上司が得意なことを行えるようにすることによってのみ、部下も成果を上げられるようになる。したがって、上司が得意でないことをあまり心配してはならない。上司が得意なことに目を向けるべき。

自らの仕事においても、まず強みからスタートしなければならない。すなわち自らのできることの生産性を上げなければならない。自らの性癖を理解し、自らの仕事ぶりと成果をみて、自らのパターンを知ることから始めるべきである。「他の人には難しいが自分には簡単にやれることは何か」を考える。

例えば、ほかの人には厄介で嫌な報告書のとりまとめが簡単にできる者がいる。ところがその報告を基に意思決定を行うことは苦手であってうまくいかないという人がいる。ということは、意思決定者としてではなく、問題を整理するスタッフとして成果をあげる人であるということになる


第5章:最も重要なことに集中せよ
成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない。
集中は、あまりに多くの仕事に囲まれているからこそ必要となる。なぜなら一度に一つのことを行うことによってのみ早く仕事ができるからである。時間と労力と資源を集中するほど、実際にやれる仕事の数と種類は多くなる。

成果のあがらない人は、下記の3つの特徴がある。
(1)1つの仕事に必要な時間を過小評価する。
すべてがうまくいくものと楽観する。だが誰もが知っているように、うまくいくものなど一つもない。予期しないことが常に起こる。しかも予期せぬことはほとんど常に愉快なことではない。したがって成果をあげるには余裕を見なければならない。
(2)急ごうとする。そのためさらに遅れる。成果をあげる者は時間と競争しない。ゆっくり進む。
(3)同時にいくつかのことをする。そのため手がけている仕事のどれ一つにもまとまった時間を割けない。いずれか一つが問題にぶつかるとすべてがストップする。


集中するためには下記の2つの遵守が必要である。
(1)生産的で亡くなった過去のものを捨てる
古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である。アイデアが不足している組織はない。創造力が問題なのではない。せっかくのよいアイデアを実現すべく仕事をしている組織が少ないことが問題である。みなが昨日の仕事に忙しい

(2)仕事の劣後順位の決定(取り組むべきでない仕事の決定)
劣後順位第一位を決定することは、楽しいことではない。誰かにとってはそれが優先順位第一位であるに違いないからである。優先事項を列挙し、そのすべてに少しずつ手をつけることによって弁解の余地をつくっておくほうがはるかに容易である。みなを満足させられる。もちろんこの方法の唯一の欠陥は、何事もなされないという結果に終わることである

一方、優先順位の決定には、いくつか重要な原則がある。すべて分析ではなく勇気に関わるものである。
(1)過去ではなく未来を選ぶ。
(2)問題ではなく機会に焦点を合わせる。
(3)横並びではなく独自性をもつ。
(4)無難で容易なものではなく変革をもたらすものを選ぶ

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