医療×ブロックチェーン③ コンセンサスアルゴリズム

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このようにクローズド型、パブリック型、どちらも長所と短所があるため、医療系ICOの中でもスタンスが分かれている。
 
例えばMedRec(MITメディアラボとベスイスラエル病院とで、ブロックチェーンベースの電子カルテを実証実験中)は、実証実験の結果をもとにプライベート型採用を決定しており、ドキュメントに下記のコメントを残している。
only registered healthcare providers are permitted to append blocks to the MedRec blockchain. Though this use of a centralised arbiter of a ‘provider whitelist’ to determine the validity of each potential sealer contradicts the decentralised spirit of blockchain technology, we believe that this level of centralised trust in healthcare providers is not unreasonable, as patients already place a high degree of trust in their healthcare providers.
 
プライベート型を採用する(承認された医療従事者のみが患者医療情報の取引を承認できる)ことはブロックチェーンの非中央集権化の思想と相反することを認めつつも 「すでに患者は医療従事者には高い信頼を置いているので、このレベルの中央集権的患者情報管理は許されるだろう」とコメントしていて、若干の苦渋も見受けられるし、信頼レベルを勝手に都合良く解釈している様子も見受けられて面白い。
 
それぞれの医療系ICOで採用されているブロックチェーン基盤の種類や取引処理速度、コンセンサスアルゴリズムに関しては下記。
    QTUM

  • パブリック型。MediBlocで使用中
  • TPS(Transaction per second, 1秒あたりの処理トランザクション数)
    • SegWitを採用して、現時点で70TPS(2018年)。ただしライトニングネットワークを採用することで、理論的には来年までに2万TPSを達成できるだろうとのこと。こちらの記事参照
    EOS

  • パブリック型。Iryoで使用中。EOSの詳しい説明はこちら
  • TPS
    • 3,097TPSを達成(2018.07.20):VISAのトランザクション速度を超え、現時点で仮想通貨で最速。10万TPSをさばけるポテンシャルがあるとされている。
  • コンセンサスアルゴリズム
    • DPOS(コンセンサスに参加するノード数を21に限定)+並行処理、非同期通信によりTPSを大幅に向上。DPOSのデメリットに関しては後述
  • ブロック生成時間は3秒(次期バージョンでは0.5秒まで短縮することが計画されている)
  • 取引手数料なし!
 
    Hyperledger Fabric

  • クローズド型。MedicalChainで使用中
  • TPS
    • 3000TPSは超えている(参考記事)15ノードで10万TPSを目標にしている。
  • コンセンサスアルゴリズム
    • PBFT(Practical Byzantine Fault Tolerance)
 
 
DPOS・PBFTのコンセンサスアルゴリズムに関して
    PBFT

  • ネットワークの全ての参加者を知っていることが前提で、多数決で意思決定した後にブロックを作成
  • デメリット:常にネットワーク参加者全員と意思疎通をする必要があるため、参加者が増えると加速度的に通信料が増加し取引速度の低下につながる→PoWやPoSと異なり、数十ノードが限界
    DPOS (delegated proof of stake)

  • 詳しい説明はこちら
  • ブロック生成者を多数決により選び、選ばれた人がブロックを作成していく仕組み。クラスの委員長決めて委員長が実行しますよ的な感じ。もしくは、間接民主制のような感じ。ただ、投票は1人1票ではなくて、その仮想通貨を持っているほど投票数を持つ。こうなると、googleのページランクみたいな感じ。
  • もちろんデメリットもあり、間接民主制とはいえ、取引の承認作業は特定の人が行っているので部分的な中央集権の構造になっている。2つの問題が発生している
    • 1)分散トレードオフ問題
      21人の選ばれた少人数による取引承認のため、3秒ごとに迅速に取引を承認できるものの、承認している人は21人だけであり、分散化を犠牲にしている(直接投票制ではないので、民意を完全に反映しているとは言えないかもしれない)。
    • 2)カルテル形成による不正操作
      実際につい最近(2018.10.01)でた下記の記事では、「選ばれた取引承認者同士で、お互いがお互いに投票を行い、何回も取引承認者として選ばれるようなカルテルを形成していた」とリークされている。
 
PHRという理想的な方向性から考えると、Iryoが採用するパブリック型のEOSが一歩リードしているか。ただしこれは、間接民主制なので、完全なる分散化ではない。先ほど述べたような、カルテル形成リスクもある。ただ、EOSはすでに3000TPSを突破しており、来年・再来年くらいには、取引処理速度という点では実運用に耐えうるレベルになるかもしれない。
 
Medical ChainやMedRecなど、クローズド型で運用するところは、PHRという構想は達成できないが、処理取引は迅速でかつ限られた(信頼があるとみなされた)病院のみでコンソーシアム的に実験するという点では実運用は早いし、合理的かもしれない。
 
ただ、データ管理において患者は締め出されているし、それだったら、日本の場合だと現状富士通が進めているHuman Bridgeと、NECが進めているID-Linkといった地域医療ネットワークで(地域の参加医療施設間をネットで接続し、それぞれの施設が保有している診療情報の相互参照を可能とし、緊密な医療連携を実現するシステム)事足りているんじゃない?という話にもなる。
 
個人的には、パブリック型ブロックチェーンでPHRを実現しないと、ブレイクスルーは、おきないのではないかと思っている。
 
次は医療データ保存問題について
 
 
 
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