医療×ブロックチェーン書きたい放題① 現状の医療データの課題
9/12に「医療×ブロックチェーン勉強会」に参加しました。MediBlocという韓国の医療系ブロックチェーンの社長を呼んでのプレゼンでした。
参加して自分のブロックチェーンに対する理解が浅いと感じたので、勉強し始めたところ結構ハマったので備忘録的にまとめてみました(この長さは、まとめられていないか。。)
まだ理解が浅い部分や間違えている部分があると思いますので、気づいた方はぜひコメントお願いします
・医療のブロックチェーンは世界的に見ても、まだまだ黎明期(技術的には実証実験段階、インセンティブ設計はこれから)
・技術やコスト検証は、ここ2,3年で急速に知見が溜まるだろうが、一番の律速は「医療情報の標準化対応」
・既存の医療情報提供者へのインセンティブ設計をいかにできるかが一番課題
1)現状の医療データの課題
現状では、患者の医療情報は医療機関ごとに電子カルテが提供する独自フォーマットで保存されていて、病院ごとの医療データの分断化が生じている。医療データ活用を求める声は強いが、異なる医療機関の患者データを統合するのは非常にお金がかかるし、実質不可能に近い(電子カルテメーカー間の利害関係により)
医療系ICOは130個以上あるみたい(驚)だが、ここでは、その中でも「カルテ情報や遺伝子情報などの患者医療情報をブロックチェーンで取り扱う分野」で進捗のある4つのICOについて取り上げる。
まず、ざっと、各プレイヤーで解決 or 合意済みの部分と、試行錯誤の部分を列挙すると下記。
- 解決 or 合意済み問題
- 医療データをon-chainに載せない
- コンセンサスアルゴリズムにPoWを採用しない
- 解決されていない部分
- クローズド or パブリック?
- どのコンセンサスアルゴリズムを用いるか?
- データ保存問題(セキュリティ問題)
- インセンティブ設計の検証
- ビジネスモデルの検証
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MediBloc
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MedicalChain
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Iryo
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MedRec
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主体 | 韓国 | イギリス |
スロベニア
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MIT(アメリカ)
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パブリック or クローズド |
パブリック
(Qtum)
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クローズド
(Hyperledger Fabric)
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パブリック
(EOS)
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クローズド |
コンセンサスアルゴリズム |
PoS
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PBFT
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DPoS
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PoC
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医療データ保存方法 | 秘密分散ストレージ(IPFS)を用いつつも、同時に、自社でバックアップのストレージも構築(こちらは分散ストレージではない) |
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Iryoが提供するクラウドストレージ+複数のバックアップ体制。
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医療機関が現在使用しているEHR |
データのセキュリティ |
Intel SGX enclave
→すでにセキュリティホール見つかっている
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対象鍵暗号方式で患者データを電子カルテに保存
→電子カルテ会社も患者情報を見ることができる(insecure)
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Zero-knowledge storage
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対応する医療情報の標準規格 |
HL7 FHIRを始めとして、様々な標準に合うAPIとSDKを開発・提供
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open EHRに準拠
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ビジネスモデル |
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遠隔診療使用料
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患者データ保存に必要なストレージ費用は医療研究者が負担 | ブロックチェーンのマイニングは医療研究者が行う |
進捗 |
韓国の複数の大学病院で実証実験中
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MyClinic.comというオンライン診療のアプリをイギリスで提供(2018.7よりパイロット開始)
2018/10/31に日中韓で試験運用開始予定
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中東のジョーダンの診療所で難民向けにシステム導入(2018.05.08)(え?そこ攻めるの?)
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ベスイスラエル病院で実証実験中 |
2)医療データをon-chainに載せない
ブロックチェーンに保存できるデータ量は非常に限られている(ブロックサイズ問題)ため医療データを効率的に保存するためには別に保存用のストレージが必要
・カルテなどの電子文書:数MB
・医療画像:数十〜数百MB
・ゲノムデータ:数GB〜
容量を超えた場合には、取引が遅れたり出来なくなってしまう問題あり。なので、そもそもビットコインベースではカルテなどの電子文書ですら取り扱えない。
一方、医療系のICOプロジェクトではビットコインベースを採用しているところはなく、イーサリアムのようにブロックサイズは固定せずにブロックを採掘したマイナーの投票で変わる。(が、イーサリアムの平均ブロックサイズは現在は0.025MB前後で落ち着いている。少ない!)
2)コンセンサスアルゴリズムにPoWを採用しない
次は、クローズド型 or パブリック型?について
P.S. もしブロックチェーン勉強したいという方がいたら、下記がオススメです。入門書をたくさん読むより、詳しく書いてある本を1冊繰り返し何回も読むほうが、結果的に良く理解できて、時間的コスパが良いかと。
①非エンジニア向け
②エンジニア向け
最後の1/3が、クローズド型のHyperledger Fabricのコーディングになります。
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