医療×ブロックチェーン⑥ ビジネスモデル

インセンティブ設計・ビジネスモデル問題

大前提として、ブロックチェーンを用いたからといって、ヘルスケア分野でインセンティブ設計を構築するのはとても難しい。

同じクローズド型のブロックチェーンとして引き合いに出されるのが金融機関だが、金融機関はブロックチェーンを導入することで「現在の送金コストを削減できる」というコストダウンの明確なメリットがある。特に国際送金は、現状では多くの銀行システムを介して行われているため、非常にコストが高い。
 
それに対して、ヘルスケアの場合、ほとんどが研究者が患者データを活用することにお金を支払うという、将来可能になるかもしれないプラスアルファのメリットであり、「将来」+「あったらいいよね」というダブルの観点からインセンティブが弱い。金融機関の場合の「現在」+「コストダウン」という明確なインセンティブとは事情が異なる。
 
金融機関での送金は、医療機関でいうところの患者情報の受け渡しに相当するが、現状では医師が診療情報提供書や退院サマリーという形で時間を割いて文章化して送っている。確かに、医師の労働時間を考えれば結構なコストになっているのかもしれないが
 
1)時間を金銭的コストに置き換えて考えるのはなかなか難しい(換算して考えられるプレイヤーが病院内部に少ない)
 
2)金融機関の送金と比較すると圧倒的に頻度が少ない
 
3)ブロックチェーンで、例えば大学病院と地域のかかりつけ診療所間で患者情報を共有したとしても、医師はおそらくは電子カルテ上に簡単な依頼文は残すため、実はそれほどbefore/afterで医師の割かれる時間は変わらない (ID-LINKで診療所と中小病院で患者情報を共有している病院で働いたことがあるが、結局簡単な紹介文は電子カルテ上に残していた。印刷して封をしてという作業は減ったが))
 
4)Afterで医師の紹介状作成に割かれる時間が減ったとしても、病院が医師に支払う給与は変わらないので、病院にとって導入の積極的な金銭的メリットがない

 

などの観点から、導入における金銭的インセンティブが弱い。

 

あと、金融機関の場合と異なり、ヘルスケアの場合には莫大な医療データをオフチェーンで管理する必要があるため、ブロックチェーン導入により現在のサーバ管理費用が劇的に変わるとは思えない(ここは推測。間違っているかも)。
 
各医療系ブロックチェーンのインセンティブ設計について、まとめると下記
 
1)医療研究
医療研究者が研究対象の患者にトークンを支払う。患者リクルーティングのシステム利用料を医療ブロックチェーンが徴収 or 医療研究者がブロックチェーンのマイニングをすることで患者データにアクセスできる。

PHRが出来ると、医療研究者が直接研究対象の患者を絞り込むことができるので、現状の患者リクルーティングコストを大幅に押さえられるメリットあるから医療研究者は患者にお金払うよね(ホント?)、患者も自分の医療情報を提供するのにお金もらえるならやるよね。という論理

2)遠隔診療
ブロックチェーンを利用したオンライン診療システムを提供し、システム利用料を徴収。患者はトークンでオンライン診療代を支払う。

3)保険会社
患者が自分の医療情報を同意の上で保険会社に提供。保険会社は正確な医療情報の提供の報酬として保険料を安くする(ホント?)。

保険会社は、従来行なっていた患者の医療情報の妥当性をチェックする多大な人件費が削減されるとのこと。医療ブロックチェーン会社はマッチングシステムを提供して一部料金をもらう

 
真新しいものは何もない。遠隔診療・研究や保険目的での患者データの利用でビジネスモデル組むという感じ。どこのプレイヤーも医療研究をメインに上げていて、確かに医療研究者としては研究対象の患者さんを検索クエリ投げてすぐに集められたらすごい便利になると思う。PHRの醍醐味。だが、それに対してどれだけのお金を払うかは、相場どの程度なのだろう?難しい。
 
そもそも、研究者個人が払うのか、研究室の予算から捻出するのかでも分かれる感じがするし、後者だと日本の研究費はメチャクチャ少ないのでビジネスモデル回らないんじゃないかと。

 

多分、研究者個人がブロックチェーンのマイニングをすることで、研究対象の患者データを集められる、とするのが一番実用性高そう。ただ、それでもマイニングするインセンティブとコストの設計は試行錯誤が必要。
 
Iryoでは、Iryoが提供する患者データのクラウドストレージの費用もIryoコインを買って負担してねとwhite paperに書いていたが、それは流石に負担させすぎな気が。。
 
 
 

進捗状況

 
最後に、各医療系ICOの進捗状況を見てみる。
telegramで各社が配信している進捗情報を見たが、みなさんなかなか新規の進捗がないからか、同じ情報を何回も使いまわして流している(苦笑
 
MediBloc
MedicalChain
Iryo
MedRec
進捗状況
韓国の複数の大学病院で実証実験中
MyClinic.comというオンライン診療のアプリをイギリスで提供(2018.7よりパイロット開始)
 
2018/10/31に日中韓で試験運用開始予定
中東のジョーダンの診療所で難民向けにシステム導入(2018.05.08)(え?そこ攻めるの?)
ベスイスラエル病院で実証実験中
 
 
進んでいるのはMediBlocとMedicalChainか。
Iryoは技術はしっかりしていると思うが、営業力がないのか進捗がイマイチで勿体無い。
 
日本という観点で見ると、この中でmedical chainは日本での実証実験も進めようとしている。
Hyper ledger fabric というクローズド型のブロックチェーンなので、富士通やNECと組めば実証実験は意外とすんなりといくかもしれない。

次は、まとめ・いろいろ考察